料理人の三種の神器

 

料理には料理人の歩んできた道が出る。

同じ材料・分量で作っても違う味なるんです。

それを味わっていただくために、

料理人は3つのことを大切にしなければあかんのです。

よし川 日本料理部門

総料理長 文山正彦

綺麗な料理やない、美味しい料理をつくらんといかん。

白い大根は切って並べただけでも綺麗です。
でも、しっかり味をしみ込ませた大根は見るからに美味しそうになる。

中学を卒業して今年で33年。日本料理の板場でしか働いたことがない。
下積み時代の苦しい生活の中で、スナックやクラブでのバイトをする人たちもいたが、自分がけがれてしまうような気がしてできなかった。
面白い人間からは面白い料理が生まれるように、料理というのは、作る人の全てが出る。
その人が歩んできた道が現れるんですね。
たとえば、ポン酢一つとっても全て同じ材料で同じ分量で作っても違う味になる。
だからこそ、料理人に大切なものは次の3つやと思っています。

「経験」

「感性」

「真心」

一品料理やお寿司屋さんはお客様が注文したものをお出しする。
でも、ここよし川でお出ししているコース料理は違う。
見えないお客様を想い、歩んできた自分の人生全てをかけて考え、作る。
力を込めすぎると、お客様も肩がこる。
力を抜いて、ゆっくり味わっていただくためには“優しさ”と“強さ”が必要です。
目と香りから入り、食べて味わっていただく。
美味しそうに見える料理は、本当に美味しいんです。

私は寿司職人の家に生まれたが、継ぎたくなかった。
料理人になろうと思ったのは憧れ。京都の街を歩く姿がかっこ良かったんです。
当時テレビドラマでショーケンが演じた「前略おふくろ様」にも影響を受けたのもありますね(笑)。
中学3年生の夏休みから、京都の「つるや」でお世話になった。
その後紹介してもらった先で「この人についていきたい」と思えたおやじ・半田博に出会ったんです。
それはそれは厳しい人やった。その日の天気だけで機嫌が変わる。
でも、その料理のセンスに圧倒されたんです。

その後、修業を続け25歳で初めて料理長となってから
本当に色々な経験をしてきました。
日本料理の素晴らしさは、他の料理にない「文化」やと思っています。
Yes、Noという白か黒かという欧米にはない、「かすかな」「ほんのり」「ぼんやり」という文化がある。
あとは食べた人の理解の範疇で変わるんです。
日本人の人間性なんでしょうね。

コース料理にしても、フランス料理のように前菜から始まって・・・メインがドン!という感じじゃなく、5品あればお互いがお互いを活かすように作るんです。
コース料理はその人の音符だと思っています。
一つの音楽をどうやって初めて、どう終わらすか。
自分の経験してきたものをどう活かすか?
お皿の上一つとっても一緒です。
食べていただく人の顔が見えるか見えないかによって大きな違いが出ます。

若い人はフランス料理やイタリア料理、その他いろいろな料理に惹かれると思います。
でも、いずれはみんなが日本料理に帰ってくる。
よし川では婚礼もたくさんあります。
婚礼のお食事風景を見ていて思います。
日本料理は大人から子供まで、誰が食べても美味しい。
いい料理です。
いつも来てくださるお客様のお顔を見ながら、ほんまにそう思っています。
人としてたくさん経験を積み、感性を磨き、真心を込めて料理を作る。
そんな気持ちで、料理人一同、皆様をお待ちいたしております。

◆総料理長のプロフィール

文山 正彦 (繭の家・別館・新別館 総料理長)

料理歴30年以上
全国で修業を重ね
西宮有馬温泉 桂山荘 総料理長
南紀白浜 ホテル川久 総料理長
箱根 強羅花壇 総料理長
などを経てよし川の総料理長となる。

鎌倉・室町時代からの陶磁・蒔絵に精通し本当に美味しい粋な料理を造ることを志しています。

 

 

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